泌尿器科学教室の紹介

泌尿器科学教室の成り立ち

昭和19年3月28日松本医学専門学校が発足した。(昭和26年3月31日閉校)
昭和20年6月1日松本市営病院(松本市鷹匠町)が、松本医学専門学校に移管され、附属病院となり、市営病院皮膚泌尿器科医長小野森(東京帝大、昭10)が、初代教授に就任した。
昭和23年12月26日松本医科大学に皮膚泌尿器科学講座が開講し、前満州医科大学教授橋本満次(東京帝大、大5)が教授に就任した。
昭和24年5月31日信州大学医学部が設置された。(皮膚泌尿器科学教授橋本満次。小野森松本医専教授は、昭和24年5月31日退官した。)
昭和26年8月25日第16回日本泌尿器科学会関東東北連合地方会(兼第15回日本皮膚科学会関東東北連合地方会)が、橋本満次会長のもとに医学部東講堂(旧市立病院講堂)において開催された。
昭和30年8月31日橋本教授が退官した。
昭和30年9月19日谷奥喜平(東京帝大、昭13、東大皮膚科助教授)が第二代の皮膚泌尿器科教授として就任した。
昭和35年8月23日附属病院の皮膚泌尿器科研究室外来及び病棟を、鷹匠町から旭町に移転した。研究室は構内中央部の旧兵舎に、外来は構内南側にあった旧兵舎内に置かれ、病棟は中病棟6階となった。
昭和35年11月30日谷奥教授が岡山大学皮膚科学教授に転任した。
昭和36年4月1日柿崎 勉(東京帝大、昭15、東大助教授)が第三代の皮膚泌尿器科学講座の教授として就任した。
昭和37年4月1日皮膚泌尿器科学講座が、皮膚科学講座と泌尿器科学講座に分離し、柿崎 勉が初代泌尿器科学教授となった。

泌尿器科学講座独立後

昭和37年4月1日泌尿器科学講座独立時は、柿崎教授以下10名で活動を開始した。教室は、旧松本五十連隊中隊兵舎3棟のうちの1棟の2階に置かれた。
昭和38年10月病院手術室の移転に伴い、それまで手術室であった場所が改造され、同月30日、その場所に泌尿器科外来が移転した。
昭和38年11月25日中央検査室を一部改造して皮膚科が2階に移ってからは、それまで3科共有であった中病棟6階は当科と放射線科で使用するようになり、看護婦詰所は当科は南側、放射線科は北側の部屋を使用した。
昭和40年10月13日〜14日日本泌尿器科学会第30回東部連合地方会が柿崎教授を会長として、松本市民会館を会場に開催された。
昭和40年10月臨床研究棟が完成。同月30日、現在の4階西の位置に教室が移転した。
昭和42年附属病院の新外来棟が完成。同年3月26日から、新外来棟での外来診療が開始された。
昭和46年4月12日中病棟より南病棟6階へ移転。(麻酔科と混合病棟)
昭和50年6月28日これまで皮膚科学会と合同で行っていた日本泌尿器科学会信州地方会を単独で開催し、以後の地方会はこの形式で開催されるようになった。
昭和52年5月13日~15日第65回日本泌尿器科学会総会が柿崎教授を会長として、松本社会文化会館を会場に開催された。
昭和53年4月1日柿崎教授が定年退官した。
昭和53年4月1日第二代の泌尿器科学講座教授として、小川秋實(東大、昭33 、東大助教授)が就任した。
昭和53年9月「症例検討会」が初めて開催され、以後、毎月最終月曜日に行うことが定着した。
昭和54年5月20日日本泌尿器科学会信州地方会を新潟大学と合同で開催。以後年1回、合同地方会を行うことが決定した。この学会は、昭和60年5月からは、山梨地方会とも合同し、甲信越合同地方会となった。
昭和55年11月泌尿器科と小児科との合同カンファレンスが開催された。以後1~3ヶ月に一度の割合で他科との合同カンファレンスを行うことが定着した。
昭和60年10月24日英語による症例カンファレンスを初めて開催、以後、1ヶ月に1回行われることになった。
昭和62年4月25日泌尿器科学開講25周年記念講演が才能教育会館で催された。(新島瑞夫前東京大学教授「膀胱癌の診断と治療の進歩」、小川教授「泌尿器科学教室二十五年の歩みと今後の展望」)
平成2年9月28日~30日第55回日本泌尿器科学会東部総会が小川教授を会長として、松本市市民会館、あがたの森文化会館を会場に開催された。
平成7年6月11日小川教授が信州大学長に就任したことにより泌尿器科講座教授が空席になった。
平成8年6月1日第三代の泌尿器科学講座教授として、西澤 理(東北大、昭48、秋田大講師)が就任した。
平成9年8月附属病院新病棟完成に伴い、泌尿器科病棟は西6階に移転(皮膚科と混合病棟)。
平成11年6月10日小川学長が退任した。
平成15年5月17日第16回老年泌尿器科学会が西澤教授を会長として、松本文化会館を会場に開催された。
平成17年10月5日~7日第12回日本排尿機能学会が西澤教授を会長として、まつもと市民芸術館を会場に開催された。
平成18年1月泌尿器科領域産学連携学講座が信州大学医学部寄附講座として設立された(平成21年3月まで)。
平成18年7月1日第23回日本二分脊椎研究会が西澤教授を会長として、信州大学旭総合研究棟を会場に開催された。
平成21年4月29日教育研究功労で小川名誉教授が瑞宝重光章を受章した。
平成21年5月7日附属病院新外来棟完成に伴い、泌尿器科外来は北3階に移転した。
平成21年10月28日~30日第74回日本泌尿器科学会東部総会が西澤教授を会長として、長野県松本文化会館、松本市総合体育館を会場に開催された。
平成22年10月20日~22日第45回日本脊髄障害医学会が西澤教授を会長として、長野県松本文化会館を会場に開催された。
平成23年4月1日世界初となる下部尿路医学に関する専門講座として、下部尿路医学講座が信州大学医学部寄附諧座として設立された。
平成24年4月7日開講50周年記念講演会、祝賀会をホテルブエナビスタにて開催した。
平成24年4月8日開講50周年記念市民公開講座を信州大学医学部附属病院外来棟4階大会議室にて開催した。
平成26年3月31日西澤 理教授が定年退官した。
平成26年9月1日第四代の泌尿器科学教室教授として、石塚 修(信大、昭59、信大准教授)が就任した。
令和2年9月11日〜12日第15回環太平洋禁制学会(PPCS)が石塚教授、東京女子医科大学足立医療センター 巴教授を会長として、TKPガーデンシティ品川を会場に開催された。 
令和3年9月9日〜11日第28回日本排尿機能学会が石塚教授を会長として、ホテルブエナビスタを会場に開催された。 
令和4年10月27日〜29日第87回日本泌尿器科学会東部総会が石塚教授を会長として、軽井沢プリンスホテルを会場に開催された。 
令和6年4月1日第五代の泌尿器科学講座教授として、秋山 佳之(東北大、平18、東大講師)が就任した。 

研究テーマ

柿崎 勉教授時代

柿崎 勉教授時代の研究テーマの一つは、膀胱の再生についてであった。中山創生が中心となって、犬を用い実験を数多く繰り返し、膀胱全摘手術後、形態、機能ともに、ほぼ正常に近い膀胱が再生されることと、その再生機構を明らかにした。この結果は、昭和42年の日本泌尿器科学会雑誌に掲載され、日本泌尿器科学会賞(坂口賞)を受賞した。

もう一つの研究テーマは、ウロダイナミクスであった。昭和39年、第52回日本泌尿器科学会において、柿崎教授は、「尿路内圧測定とその意義について」と題する特別講演を行った。横溝圭治が中心となり、尿路内圧測定機器の考案、改良を行い、上部尿路の生理学的及び病態生理学的機構を解明した。約10編のウロダイナミクスに関する研究論文が発表されたが、そのうち福井準之助が中心となって行った小児の排尿機構に関する研究は、昭和52年の日本泌尿器科学会賞(坂口賞)を受賞した。これらの業績を総括して、柿崎教授は昭和52年の日本泌尿器科学会総会で「ウロダイナミクスの諸問題」と題して会長講演を行った。

これら以外に腎下垂の病態生理、RIを用いた腎周囲リンパ流の動態解明、大腸菌尿路感染の細菌学的免疫学的研究、前立腺癌組織培養の研究などが行われた。

小川 秋實教授時代

昭和53年小川 秋實教授の就任以降は、研究テーマを大きく三つに分けた。

第一は、ウロダイナミクスについての研究で、柿崎教授時代からの研究テーマを発展させ、排尿障害の病態解明、神経因性膀胱の治療に取り組んだ。

第二は、尿路性器悪性腫瘍についてで、膀胱腫瘍の疫学的研究、集学的治療法に関する臨床研究、尿路上皮腫瘍の初期病変の病理学的研究、抗腫瘍剤の毒性軽減の研究などを行った。

第三は、尿路感染症についてで、複雑性尿路感染症における薬剤耐性菌の駆除を目的とする、菌交代現象の解析をメインテーマに動物実験や臨床試験を行った。

西澤 理教授時代

平成8年6月、秋田大学より西澤 理先生が第三代教授として着任した。

教室の研究内容は、小川教授時代の研究内容を踏襲しつつ「尿路機能の生理薬理学的研究」、「尿路機能障害に対する外科的治療法に関する研究」、「尿路再建に関する研究」がメインテーマとなった(具体的な研究業績については、業績集参照)。骨髄細胞や脂肪細胞を用いた尿路再建や間質性膀胱炎の尿中マーカーの発見など、臨床応用が期待される研究成果があがっている。

一方臨床面では、平成20年10月より骨盤臓器脱に対するTVM手術を、平成20年11月より前立腺癌に対する密封小線源療法を開始した。また平成5年より開始した腹腔鏡下副腎摘除術が、平成23年7月に150例を超えた。さらに、平成24年12月には手術支援ロボット「da・Vinci」が信州大学医学部附属病院に導入となり、「da・Vinci」による前立腺全摘除術が施行された。その他、全国から症例が集まってきている難治性尿道損傷に対する尿道再建術、生体腎移植も症例数が増えている。

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